「見たら見られた〜モンゴルの遊牧〜」

2009

モンゴルにて

2009年熊谷守一大賞展 佳作受賞

 

遊牧されてる家畜たち ヒツジとヤギです。

とても大事な資源であり、食料でもあり とても大切に

育てられています。

ひたすら口を動かし続け、。時にはメー!とかマー!とか

ウワアー!と叫んでいます。

さらには まるで 人間顔負けの咳や嗚咽、くしゃみに

ゲップ、しゃっくりを何十回ものヒツジたちがあちこちで繰り広げています。

見ているだけで1にちがあっという間です。

家畜の割合として、ヤギが2。ヒツジが8の割合だと聞きました。

遊牧民の人たちにとってヒツジの方が家畜として優れているということなのですが、ヒツジだけだと性格が能天気なために、群れが締まらず散らばってしまうそうです。

なんとなく持っていたヒツジのイメージと合致しました。

もう一つの理由としてはヤギは牧草を根こそぎ食べるが、ヒツジは葉の部分しか食べないからよい。という話も聞きました。

 

 

 

「雨が降るから」

2009

モンゴルにて

 

モンゴルはすべてが新鮮でした。

草原の中にポツンとゲルがあり、その周りには家畜の群れがいます。それから、ゴリオというコオロギが信じられないくらいでかいこと、水のかわりに塩っぽいお茶を飲むこと、馬に乗ること、子どもが働いていること(お金を稼ぐということではなくて)モンゴルに連れてきてくれた友達がモンゴルの生活に馴染んでいること。とにかく何気ないひとつひとつにいちいち感心していました。

とても晴れた気持ちのいい日。

遠くに雨が見えたのです。雨の匂いだとか気配で「雨が降りそうだね」というのではなく「雨がこっちに向かってくるね。」というあの感じに私はまた感心したのでした。

 

 

「「見たら見られた~人間をつなぐ~」

2011

イタリア フォッソンブローネにて

2011熊谷守一大賞展 奨励賞受賞

 

 

「見たら見られた~人間をつなぐ~」

私にしたら大冒険だったイタリア滞在。

まず、言葉がわかりません。会話が成り立たないと

どんどん自分に自信がなくなっていくのがわかります。

気まずい沈黙。

でも何日か顔を合わせているうちに

同じ会話の中で一緒に笑っていることに気がつきました。

それをつないでくれたのが「動物」です。

イタリア人と日本人と犬の会話に言葉が成立するわけがないけれど

私たちは自然と同じ時間を過ごせていた気がします。

 きっとみんな「この子、話せもしないのになぜわざわざ来たのかしら」

と思っていたに違いありません。

 

「見たら見られた〜雨が降ってきた〜」

2013

東京都町田市にて

2013年熊谷守一大賞展 入選

 

夏の終わりの夕暮れ時、急に暗くなりました。

 ポツッポツッ  ポツポツポツ!

なま暖かいあまつぶがタラリと頬をつたります。

 太陽に熱せられていた、コンクリートや土がたちまち

それぞれのにおいを放ち、

 

誰かの家のイチジクの葉っぱからもにおいが浮かんできました。

 

「空まで飛べる」

2013

 

多摩川の河川敷にて

 

秋のポカポカな多摩川を歩いていると、白や黄色オレンジ色にむらさきいろの蝶々がヒラヒラ〜、チラチラ〜よ飛んでいてまるで小さくちぎった色紙が降っているようです。地面の方ではバッタバッタ、バタバタバタ!足を踏み込むたびに草むらからトノサマバッタが飛び上がります。

ぬきあし、さしあし...高鳴る鼓動と鼻息を抑えて近づき「よし。これはいける。」と私は確信します。「いまだ!」と同時にジー、、、バッチン!とひと蹴りの大ジャンプ。羽を広げて手の届かぬところへひとっ飛びです。

 

 

 

 

「コレクションから逃げろ」

2014

潮溜まり、浜にて

 

台風がさった後の砂浜。

 気がつくとポッケの中はズッシリ重くなっています。

 ひとつでも拾い始めたらもうやめられません。

 波にもまれて独特のフォルムをしたタイルやガラス。 海藻や乾いたふぐ。イカの甲羅、カニのつめ。

段々とポッケが湿ってくるので、いったん並べてみると

 配置によって色の鮮やかさや存在感が変わり、

 並べ替えに夢中になります。

 たまにヤドカリが入った殻もひろっている事があるので

 チェックが必要です。

 ひろって満足してしまいポッケに入れたまま

 洗濯してしまったら大変。

 しんでしまった貝はとても臭いからです。

 

「探しさがされ〜タコが逃げる〜」

2014

干潮の潮溜まりにて

 

  タコにあこがれがあります。

私のような素人がとれるような相手でないと思っていたし、

なんといっても美味しすぎます。

でも私はタコを何回も穫った事があるのです。

意外とタコは出会いやすく、穫りやすい獲物でした。

そんな意外性もふくめ今でも想いは変わりません。

しかし、憧れに伴い恐怖感も持っています。

吸盤で手首辺りをキューっとつかまれた時には

ゾッとして振りはらい逃がしてしまいました。

そして再び、憧れと恐怖感を抱きながら、

逃げたタコを探します。

 

 

 

「となりの柿は赤い」

2012

東京都町田市にて

 

柿が大好きです。

味、色、食感、存在すべてが好きです。

スーパーに売っている柿、岐阜の富有柿

鶴川の柿、台風で落ちた柿、もいでも良さそうなあそこの柿。全部集めてみると色々な形や色があり

 

どれもこれも良い風合いをしています。

 

 

 

「ただ集めているだけ」

2014

東京都町田市にて

 

 

「ただあつめているだけ」

小学生は大事なものを落としたり、

なくしてしまったりすることがとても多いです。

私の場合は、大事なものというのはいつも持っていたいとか、

見せたい、見せびらかしたい、ほめられたい。

という感じでたいした意味はありませんでした。

使用済みのテレフォンカードは特にそういう感じです。

 ある日まだカチカチで小ちゃい青いミカンとダンゴムシを

モクモクと集めている子どもがいました。

「何やってんの~?」と私は質問しました。

その子は えっ、何が??という表情をして「集めているだけ」。

と一言返してきました。

そして私の心は一気にタイムスリップしたのでした。 

 

 

 

 

「くまの時間」

2014

東京都町田市にて

 

 見たら見られた。

確実に体験できるだろうと思い多摩動物公園へ行きました。

ターゲットはヒグマ。

ワクワクしながら鉛筆と紙を片手にヒグマゾーンへ向かいました。

ヒグマは両手を前に組んでその手をただただ見つめています。

私は咳払いをしてみたり、口笛を吹いてみましたが

ヒグマはこっちを向きません。

動物ならば気配をかんじたら「こっちを見てよ」

と最初は思いましたが、

いや、これはこれで面白い。

ヒグマのそんな時間を私は結構長い事、見ていました。

 

 

「見たら見られた~気づいてほしい~」

2014

東京都町田市にて

 

ヒグマは動く様子もないようなので

フクロウを見に移動しました。

 フクロウといえば「ジロリ」と鋭い眼光。

これなら見てもらえるだろうとシロフクロウ前で止まりました。

パリパリチョコアイスのような容姿のフクロウはキレイで

美味しそうだなと思いながら目が合うのを待っていました。

目を細めたまま首を伸ばしたり縮めたり、一回転させたり、

とても面白いです。

しかし目が合いません。

またか、、と思い一歩近づこうとしたそのとき。

後ろをむいていた顔をクルッと戻し

目を「ギッ」と見開きこちらを見ました。

やっと、見たら見られました。

 

 

 

「そこにいるのはわかってる」

2015

東京都町田市にて

 

 

引き裂くような、マネして返事をしたくなるような、

響き渡るキジの声。

どんな茂みに隠れていても、だいたいの居場所は

見当がついてしまいます。

「そこにいるのはわかってる!」

キエン!ケーーーン!!!

 

 

とにかく 自動車には気をつけて いってきます!

 

 

 

「晴れているのに」

2015

東京都町田市にて

 

 「晴れているのに」

雲ひとつない4月の空のした、のびる、つくし、せりなどの

収穫に勤しんでいました。

 ケンケーン!キッキー!と近くで鳴いてると思ったら

キジがキョロキョロしながら、竹林から出てきて田んぼの畦で

羽根をばたつかせています。。

田んぼにはヒキガエルのオタマジャクシがうじゃうじゃ。

それを狙っているのかカワセミもスッと飛んで来て

嬉しいツーショットです。

すると急に頭上にす~っと影がかかりました。

見上げると大きなアオサギが飛んでいます。

見とれているとヒュルルル~と真っ白いフンを放ちました。

4月の風に乗ってフンはクルクルッとスパイラル状に散り

花火のようです。

アオサギはそのまま田んぼへ降り立ちました。

これは嬉しいスリーショットです。

 

 

「もう もどれないカラ」

2015

東京都町田市にて

 

 「もうもどれないカラ」

犬の散歩の途中、ぴろ~んと小さな榎の木に目をやると

何かいます。

よくのぞいてみるとウサギの耳のようなツノを生やした

イモムシでした。

あまりにかわいいので榎をチョキンと切って持ち帰りました。

 調べてみると外来種の「アカボシゴマダラ」とやら。

2本のツノをフリフリゆらしながら威勢良く榎を食べる姿は

目が離せません。

いっその事このまま大きくなれば良いのに。と思った夜。

イモムシは前蛹になり、朝にはすっかり蛹になっていました。

 それから一週間ほどたったある日、見事な羽根をひろげて

チョウになりました。

ポツンと残された抜け殻はとても小さいです。

もうどんなにからだを縮めたって戻れません。

 ふと、気がつくと

チョウはもういませんでした。

 

 

「見たら見られた~春のにおいによる~」

2015

東京都町田市にて

 

夜。

犬の散歩でおもてに出ると

スタスタスタっと何かが横切ります。

犬でもない。猫でもない。

ハクビシン?

いやタヌキだ!

と判断するまで必死に目で追います。

タヌキは焦るわけでもなく、たいして私たちを

意識せずに、また近所の家を、はしごします。。

 

 

 

 

 

「朝になったら」

2016

東京都町田市にて

 

 

9月の終わり。

部屋の中で観察していたアゲハの幼虫がいなくなってしまった。本棚や机のうら、あちこち探してみたが 見つからない。それから数日間は レモンの枝をコップにさしておいたが、かわいいあの子は帰ってこなかった。

そして3月。

朝 目をさますと、羽をジリジリ広げようとしているアゲハチョウが目の前にいる。

「なるほど、そろそろ変身の準備が始まる準備が整いつつあったイモムシは食べるだけ食べて 家を出て行ったのだな。」それから私はアゲハが羽を広げていくさまを尊敬のまなざしで眺めた。アゲハは焦ることなく じっくりじっくり羽の先まで息を吹き込んでいく。もし私がチョウならば「はやくしなきゃ!はやくはやく!アーアーアーもうみんな 行っちゃったんじゃない!?」などと慌てふためきビロビロの羽を広げて飛んでいくのだろうな、、と反省し

何事も焦らず、恐れずゴーイングマイウェイでいきたいものだ。と、改めて考えた朝だった。

 

 

 

 

 

「新しい朝」

2016

東京都町田市にて

 

 

 

観察してわかったことは、イモムシは小さなからだの中で何段階もの成長をし続けているということだった。(かなりの確率で寄生されていることも知る)食べて食べて、フンして食べてフンフンフン。成長するごとにかたちも色も別人のよう。イモムシは毎日毎日新しいからだと心で朝を迎えている。前蛹から蛹の時代にはいろんなことを考えたり計画したり、妄想したりしているのだろうか。

 

蛹から出た日には 羽をグーンと伸ばして どこへ行こう! 

 

 

 

 

「赤くなった日」

2016

東京都町田市にて

 

 きのうの朝まで庭のサクランボの木には

たくさん実がなっていました。

今朝見たらひとつもないんですよ。

疑いたくはないのですが、見たって人もいるんです。

 

しりませんか?

 

 

 

 

「いってきます!」

2016

東京都町田市にて

 

 おなかがすいた

ザリガニ、カエル、食べでのある虫

はたまた畑に行こうか

あっ それともあの家の庭に行ってゴミ箱あさ

いやいや、でもあの家は犬がヒステリックでこわいこわい!

 

とにかく 自動車には気をつけて いってきます!

 

 

 

「これからの顔」

2016

東京都町田市にて

 

 これから大きな実になるザクロの花

これからあま〜いにおいを放つまだ青いモモの実

これからどんどん咲き始めるアジサイのつぼみ

みなぎるパワーを持つメンバーが集まって

ものすごい 良い顔が小学校のグラウンドの片隅にあらわれた。

これが これからの顔だ!

 

 

「ざわざわ」

2016

東京都町田市にて

 

 小学生がたくさんルリボシカミキリをつかまえている。

色からして憧れだったカミキリムシかこんなに身近にいるとは!

私の心がざわついた。

興奮気味でついていくと

みんな雑木林でルリボシを探している。

私も一匹でいいから自分でつかまえたい。

「これ一匹ならあげるけど?」

いいや私は自分でつかまえたいんだ。

せっかくの好意をふりきりくちたきりかぶなどを見回した。

しかしこれだけのハンターがいたら そう簡単にはもう見つけられない。

 

数日後。

ふわ〜と私の方へ何か飛んできたので 見てみると

ルリボシカミキリだった。

 

 

「おもてなし」

2016

東京都町田市にて

 

木陰やすき間からちょろりと出てくるニホントカゲ。

これを見たら、みんな われさきにと、探し出す。

 

オレがみつけた!

オレが昨日つかまえたやつだと思う!

オレ飼い方詳しいからオレが持って帰る!

 

いろんな主張が飛び交った。

そしてトカゲは一人の少年に引き取られペットボトルのなかへ。

 

ヒメジオンやアリを入れてあげてこれはこれは最高のおもてなし。

 

持ち帰るのを忘れてしまうまでは。